Memory of Night
第16章 終章
「もっと俺を好きになればいい」
「……なんだよ急に」
宵が困惑に眉を寄せる。
からかいなど微塵も含んではいないような口ぶりで、晃は言った。
それから左手を差し出されて、宵はそこに拾い集めてきたものを乗せた。
それには目もくれず、灰色の瞳を見つめたまま続ける。
「……心配なんだよ、無茶ばっかする君のことが。特に志穂さんが絡むと、自分ことなんか二の次になっちゃうだろ?」
志穂の治療費のため、中学の頃から宵はずっとバイト三昧だったのだという。金のためなら平気で誰とでも寝るし、晃の酷な要求にも、結局最後まで逆らわなかった。
一人でなんとかしようだなんて、無謀にもほどがあるのに。
自分の限界を見出して、諦めてくれればまだいい。諦めて、誰かを頼ってくれるなら。
でも宵はそれすら拒んだ。誰かを頼る代わりに、自分が生きるのに必要なものを切り捨てていってしまうのだ。
それも宵の、酷く不器用な優しさの形なのだということはわかるけれど、許容することはできなかった。