Memory of Night
第16章 終章
「宵の一番の目的は志穂さんだったろ? 何より執着していたもの、それはあの人の命だった。あの人の病気が治って、宵の生きることへの執着が、希薄になったような気がしたんだ――あの時」
晃の言う『あの時』が、不良たちに殴られて初めて病院で目覚めた時だとなぜだか理解できた。
生きてたって死んでたっておまえに関係ない。そんなふうに叫んだことを、晃は今でも気にしているのかもしれない。
金髪に首を絞められた時、魔が差したとはいえ、死を受け入れたのも事実。それがたとえほんの一瞬とはいえ。
そんな自覚は少しもなかったけれど、言われてみれば晃の不安の意図に納得はできた。
「だから今度は俺に執着しなって言ってんの。……俺が一番大事に思ってるのは宵だから、宵が傷つくのは悲しい。俺が悲しむのは嫌だろう? だったら俺と自分を両方大事にすればいい。わかった? 俺を愛せば自分のことも大事にできるってこと」
「……よくわかんねぇんだけど」
けげんな顔で宵が晃の瞳を見つめる。
「馬鹿だな。……ていうか鈍いな本当に」
晃の発言に、ムッとした表情を浮かべかけた宵の唇を自分のそれで塞ぐ。