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Memory of Night

第4章 過去


 ――好きだった。


 優しくて、母親みたいに接してくれた志穂が宵は大好きだった。

 だから無理なんてしてほしくなかった。もっと志穂自身を、優先して考えてほしかった。

 育てるのが無理なら、捨ててしまっても構わない。

 宵は、一人じゃ何もできない弱い人間じゃない。

 一人だって、年ごまかして、バイトでもして、どうにかして生きていけた。

 ……結局自分は志穂の負担を増やす重荷でしかなかったのだ。

 そう思うと、ひどく悲しかった。やりきれない気持ちになった。

 もう志穂に甘えるのはやめて、母親だなんて思うのはやめて、離れようと思った――。

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