Memory of Night
第5章 玩具
「あ……」
その腕を振り払おうとする間もなく、後ろから羽交い締めにされる。
「逃げるなよ、宵」
「離せよ……っ」
そんなのは無理だ。ローターなんて固い塊を自分の中に入れるなんて。
入るわけがない。
宵は必死で晃の腕から逃れようともがいたが、体格差のせいで敵わない。
晃が宵の耳を甘噛みする。
「……ん……ッ」
同時に体操着をめくられ、素肌を直に触られた。
その感触に、ゾクリとした。
宵は身をよじり、晃の腕の中からどうにか抜け出そうとする。
「往生際が悪いよ、宵。……志穂さんのために金が必要なんだろ?」
その言葉に、宵が一瞬悲しげに顔を歪めた。
暴れていた力をスッと抜く。
言ってしまってから、晃ははっとする。
これでは、まるで脅迫だ。確かに宵を強引に誘いはしたが、脅迫するつもりはなかった。
宵と志穂とのことは詳しくは知らないが、宵は志穂のことを本当に大切に思っているみたいだから。
この状況でそのことに触れ宵を追い詰めるのは、あまりにも酷なことのような気がした。