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Memory of Night

第5章 玩具


(だいたい、オシオキってなんだよ。変なテレビや雑誌の見すぎじゃねえ?)


 モップを手にしながら心の中でつぶやく。

 普通高校生の男子がそんな言葉使わない。

 ……というより、こんなおもちゃだって持っているのはおかしいのだ。


「なあ、宵! こっち手伝ってくんないか?」

 その時、遠くで名前を呼ばれた。

 声の主をさがすと、それはクラスメイトの大山(おおやま)だった。


「わかった!」


 モップを置き、大山のところまで歩き出そうとした途端、中の塊が大きく内壁をえぐった。


「ん……ッ」


 その場に崩れこみそうになった体をなんとか支える。

 歩く度に中が擦れて、その刺激に体の芯がうずくようだった。


「調子……悪そうだな? 大丈夫か?」


 大山のそばに辿り着くと、大山が心配そうに聞いてくる。


「……ヘーキ。なんか、夏風邪ひいちまったみたいで」

「休めばいーのに」


 宵は無言で首を振り、大山が運ぼうとしていたらしいマットに手をかけた。

 上履きで入れるよう、体育館に敷き詰めるためのマットだ。

 一人では重いので、宵を呼んだらしい。

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