
仔犬のパレード
第1章 捨
ビュゥ…
何処かから入ってくる冷たい風
その何処かはわからない
身に纏うものは薄い布だけ
もう、とっくに足先の感覚はない
もしかしたら あの鼠の様に、ボクの足も腐っているのかもしれない
今は冬なのか…それとも夏なのか
朝なのか夕方なのか
それすらも もうわかりそうにない
隣で寝ている子にと
振り絞った力で引き寄せたのはボロボロの毛布
少しでも暖かくと顔までかけてみたけれど
ピクリとも動かなかった
どんよりとした暗闇の中
眠いわけではないけれど、重く今にも閉じてしまいそうな瞼
薄く開いままの視界の先にあるのは
開くことのない鉄の扉
そこに付いている小さなポストみたいな窓
そこから「餌だ」と腐りかけた食べ物が投げ込まれなくなってから
どれくらいがたったのだろう
━━━ボクも、少ししたらこうなるのかな…━
傍らの毛布の塊に視線を下ろし、そんな事を何時間も考えていた
