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仔犬のパレード

第1章 捨





時間はいくらでもあった


空腹はとうに通り越し、胃の痛みすら感じない



━・・くん。朝ごはんはきちんと食べなさい。


朝が少し苦手なボクに言ってくるのは、優しい母さんだ


━…母さん。食べるものがないよ。


━何言ってるの。早く食べないと遅刻するわよ。それに朝ご飯食べないと、頭が働かないんだから。


━違うよ。ご飯食べないと頭だけが残るんだよ。
発見したんだ。ねぇボクは良い子でしょ?
だから……


━……





━━ごめんなさい………━━━







もう限界だと、重たかった瞼を閉じようとしたその時だ


ペタ…、



ぇ……?


微かに聞こえた この部屋のものではない音


コツ…



また…


足音…?



「……〜…」


声?


餌?





……違う、あいつらの足音はこんなじゃない


この部屋にだんだん近づいてくる足音は…たぶん2つ
1つは、ペタペタと。でも静かな
もう1つは、コツコツと。はっきりとした足音



「……〜」
「……〜〜〜…」


男?誰…?何しに来るの?
もしかして…此処から………


そこまで考えて、考えるのを止めた
期待など此処では無意味
何度願い、何度すがり…何度堕とされたか……


何も…なんにも変わらない………



…ペタ、



鉄の扉の目の前で止まった足音


狭い視界から、その扉をじっ。と見据える


そして


トン、トン、トン、


ゆっくりと扉が3回鳴った




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