
仔犬のパレード
第4章 歯
な…んだったんだあれ…
あの後、智は俺に触れるだけのキスをして
智『ん。いってくるわ』
いつもの様に、少しだけ笑って出ていった
それは、本当になんも無かったかの様に
平然と出掛けていった
ジンジン
ジワジワ
唇や口内に残っている痺れに、智の唾液
目に焼き付いたままの あの目
チリチリ。と痛みの残った背中
翔「…はぁ……」
俺は広間に入ってすぐドアに背を預けヘタりこんだ
…
頭 痛い
訳 わかねぇ…
下を向けば、更に脳ミソが
ズキズキと痛んだ
雅紀「…翔?」
翔「……」
雅紀「大丈夫?」
翔「……あぁ。大丈夫だ」
雅紀「………」
1度、ゆっくりと空気を吸って
ゆっくりゆっくりと吐き出した
翔「ほんと大丈夫だ」
立ち尽くしてる雅紀を見上げる
雅紀「……翔。血が出てる」
翔「え…どこ…」
俺の「え」と同時だった
雅紀の親指が唇に触れた
雅紀「ここ。痛い?」
翔「……」
唇…?
…ぁ……
智だ
俺が引き離した時…
違う。智が離したんだ
ガリッ…。
離す瞬間
まるで猛犬の様に、智の犬歯が俺の唇に噛み付いたんだ
