仔犬のパレード
第5章 里
声を掛けてきたのは痩せた小柄の男
『はい』
足を乗せてもらうよう出した木箱
『…』
だが、その手は自然と止まる
何故なら、No.224の視界に入ったその足には靴はない
代わりに、くそボロい薄っぺらなサンダルだったからだ
『……』
『こっちこっち』
こっちこっち。と言う言葉に、足元から顔を上げれば、その男は明後日の方を向き
ひらひらと誰かに手招きをする
『こいつの靴磨いてやって』
そう言って、向けられた笑い顔
夕陽の影になってはいるが、
No.224には、はっきりと顔が見えた
あの写真とは、服装から髪型まで全然違う
そして、そこにある顔は少女そのものでもなく…幾分成長し、青年に近くなっていた
『…はい』
どく どく どく
No.224の心拍数が上がっていく
━ワルイヒト
体の中を血が廻り、冷たかった指先がじわじわと熱くなる
━ミーツケタ
ゆっくりと自分の背中へと手を伸ばす
が
サトシの後ろから のろりと現れた影
No.224は
またしても動きを止めることになる