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仔犬のパレード

第5章 里





疲れは無かった


眠くも無かった


連日、極僅かな食料と、極僅かな睡眠時間


普通の人ならば、倒れ、当にこの世に居ないかもしれない


そう、普通の人ならば




224


このNo.を与えられたのは
まだ言葉もろくに話せない頃


背けば、目の前が見えなくなる程
殴られ、蹴られ

背かずとも、相手の気分で殴られた



流れる血液

必要な栄養は与えてなんて貰えなかった



辛い 痛い 苦しい 眠い

それがなんなのか教えてくれる人はいない


楽しい 嬉しい 美味しい 気持ちいい

そんなもの与えてくれる人はいなかった


ただ、毎日 無を植え付けられていく



そんな、人ではない世界

善か悪かも解らずに終わっていく短い人生



そんな中、No.224が身に付けたのは


"解離"


体と心を切り離すこと


そして



『靴。磨いて貰っていい?』



ここまで生き延びてきてしまった不運と呼ぶべき"強運"だった









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