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仔犬のパレード

第1章 捨



ーーーーー……ーーー………



バァ…ン!!


まるで爆発したような音をたて

開いた


…開いた


そう、鉄の扉が開いた。んだ


どんなに開けようとしても開くことのなかった…
諦め…でも諦めきれなかった扉が


その黒く重い扉が無くなった場所からは
こっちの世界と、あっちの世界とが入れ替わるように


淀んだ空気が外へと出ていく


久しぶりに見る強い光に眩暈がする



開いてるうちに…早く…

逃げなきゃ…



そう思うのに、体はちっとも動かない


…ぁ

扉から入ってくる光に影が落ちる
人が1人、中に入ってくるのがわかった


誰…?

逃げなきゃ

逃げなきゃ…!




智「こんにちは。」


っ!


その人は、ボクの前に膝をつく


智「はじめまして。俺は智。」


…もう耳鳴りが止まない鼓膜を
包み込むような声


瞼の隙間に見えたその顔は…
歪んでしまっていてわからない



智「ねぇ━━…━━━」


もう…声が…



助けて


助けて


ボクをここから出して


ボクを…ここから…




視界から光が消える刹那


ふわり

左手に微かに温もりを感じた━━━…




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