
仔犬のパレード
第1章 捨
智「ここか。」
ペタ…と止まった足音に合わせて、俺の足も止める
翔「……。」
そこには、錆びきった赤褐色の鉄の扉
錆びてるとはいえ、"それ"用に造られたのであろう この建物に不釣り合いなほど頑丈そうな扉
大人でもこれじゃな…子供の力じゃ到底無理。ってわけだな
トントントン
智はゆっくりと扉をノックし、扉に耳を近づける
別にノックは礼儀とかそんなんじゃない
中の様子を確認するためだ
智「………う~ん。1人だけかな。」
翔「生きてんの?」
驚き~
智「でも死にそうだな。翔。開けて。」
俺は「はいはい」と適当に返事をして、持ってきた鍵を扉に差し込んだ
ガッチガチに錆び付いた鍵穴は、いつから使われなくなったのだろうか
智が、早くしろとばかりにサンダルをペタペタしているのを背中で聞きつつ、何度か出し入れを繰り返し、最後はほぼ力任せに回して
ようやく ガッ…チャ…ン。と鈍い音が鳴った
その途端
っバァ…ン!!
すかさず扉を開けたのは智
開けた瞬間、扉から飛び出してきたのは
無数の蝿に、ゴキにでっけぇ鼠
それも何匹も…
うへぇ……ひでーな
つーか
翔「くっさ!」
鼻がもぎれる程の悪臭
俺は思わず袖で鼻と口を覆った
智は、そんなの気にも止める様子もなく
迷いなく暗い部屋へと踏み込んで行く
あの軽装で良く行けんなぁ…
感心を通り越して、呆れた
