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take a breather

第25章 P・A・R・A・D・O・X

次の日から、スマホに先生からのメッセージが来ることは無くなった

そりゃそうか…あんな態度取ったんだもんな

美術の授業はあったけど
その日の課題を描いてスケッチブックを提出した時も
ニコッと笑って受け取ってはくれたけど、何も言われなかった

展示の手伝いもしなくて良いって事かな…

自分で距離を取ろうとしたくせに
いざそうなると寂しく感じるなんて、我儘過ぎるだろ

学祭を2日後に控えた日
朝、校門をくぐると後ろから車が入って来た

進路を邪魔しないように横にずれると、その車がスピードを落とした

横を通り過ぎて行くのかと思いきや
運転席の窓が開き、二宮先生が顔を出した

「おはよう、櫻井」

「おはようございます」

「おはよう、櫻井くん」

「え?」

車の中から聴き慣れた声がする

中を覗き込むと、助手席に大野先生が座っていた

「大野先生?なんで…」

なんで二宮先生の車に乗ってる?
そう質問しようとしたのに、聞く前に二宮先生が俺に話し掛ける

「櫻井、お前も手伝え」

「手伝うって、何を…」

「絵を運ぶんだよ」

絵を運ぶって…大野先生の絵?
なんで二宮先生が運んでるんだ?

「カズさんに頼むんじゃなかったんですか?」

「あ"あ"っ?だから運んでやってるんじゃねぇか
朝から寄り道なんて面倒くさい事させやがって」

「あの、どういう事でしょう…」

「とにかく駐車場に来いっ!
わかったか?」

「はぁ…」

なんだかよくわからないが
あの二宮先生の機嫌を見る限り、手伝いには行った方が良さそうだ

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