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take a breather

第25章 P・A・R・A・D・O・X

放課後、大野先生とふたりで
教室の壁や、イーゼルを使って絵を展示した

「ふぅ〜…こんなもんかな」

「圧巻ですね…」

持ち込んだ絵と学校に置いてあった絵
30点近くを一度に観られるなんて、凄い贅沢

「ありがとね、手伝って貰ったお陰で早く終わった
ひとりでやってたら、倍以上の時間が掛かったよ」

「こちらこそ、ありがとうございます
みんなよりも早く展覧会を観ることが出来ました」

「展覧会だなんて大袈裟だなぁ」

大野先生が照れ臭そうに笑う

「これだけの絵があれば
十分、展覧会ですよ」

「ふふっ、櫻井くんがそう言ってくれるならそれでいっか
さ、休憩しよ?コーヒー入れるね?」

「はい」

大野先生の後について、準備室に入った
いつもここで観る炎の絵も展示してしまったから
今はここには何の絵も飾られていない

「そういえば、あの描きかけの絵もないみたいですけど
どうしたんですか?」

「ん?あの絵?あれはね、今ウチにある
夏休みにウチで描いてたんだ」

大野先生がコーヒーを入れながら答えてくれた

「完成しそうですか?」

「うん、ほぼ終わったよ
はい、コーヒー」

「ありがとうございます」

大野先生からコーヒーを受け取ると
当然のようにふたりでソファーに行き、並んで座った

「展示しないんですか?」

「うん、しない」

「なんだ…観たかったなぁ…」

好きな人の為に描いてる絵は、観られなくても仕方ない
でもあの絵は、ずっと完成を待ち望んでいたのにな…残念…

「ここには展示しないけど、櫻井くんには観せてあげる」

「ほんとですか?
いつ観せて貰えるんです?」

「今は文化祭の事で忙しいだろ?
文化祭が終わったら観せてあげるよ」

「楽しみにしてます」

2年以上掛かって、ようやく描き上げた大作と言っても過言ではない作品

俺の卒業までに完成してくれて良かった

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