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take a breather

第12章 Step and Go

その声に振り向けば
あからさまに『ぎくっ』っとした表情を見せる

「そんなに警戒するなよ
なんか傷つくんですけど〜」

「…なんでいるんだよ」

入り口で立ち止まったままのショウ

「なんでって、俺ここの常連だもん
いたっておかしくないだろ?
なぁ?マサキ」

「そうですね。たま〜に来なくなったりもしますけど
少なくともこの2週間は上得意のお客様です」

余計なこと言わなくていいっつうの…
ショウが余計に訝しむだろうが

「…マサキごめん。急用入ったから帰る」

くるりと踵を返され
慌てて立ち上がりショウの元へ走り寄る

ドアノブに手を掛けたその腕を掴んだ

「ちょっと待てよ…
何もとって食おうとしてる訳じゃないんだから逃げなくてもいいだろ?」

「逃げてなんかないっ 勘違いするなっ
別に智の事なんて意識してないしっ」

そう言いつつも視線は一切合わせてくれず

はじめに見せた表情といい
今のこの態度といい

これを『意識してない』と言い張るには無理があるんじゃ?

でもあまり突っ込むと本当に逃げられそうだな…

「ごめん、俺の勘違い…自意識過剰だったな」

「…」

掴んだショウの腕から手を離す

「俺がいるのが気に入らないなら俺が帰るから
ショウはピアノの演奏していけよ…
マサキだって困るだろ?
急にピアニストがいなくなったら
具合の悪いカズを呼び出すことになるかも」

そう言うとショウは『はぁ〜』っと息を吐き出した

「わかったよ…弾くよ
それと、ごめん…俺も自意識過剰だった…
智が俺の事 待ってる訳ないのに…
智も帰らなくていいから呑んでいけよ」

いや、そこは自意識過剰じゃなくて本当は待ってたんだけど…っていうのは言わずにおこう

まぁ、具合の悪いカズをダシにして悪いけど
これでショウに逃げられずに済んだ

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