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雪原に咲く椿

第1章 邂逅ーツナガリー

吹きつける風は容赦ない。踏みだす一歩一歩が重く感じるーーどれくらい歩いただろうか。


あの花を見た瞬間、いてもたってもいられなかった。判断を誤ったかもしれない、普段ならこんな愚かな間違えをしないだろう。




……本当に、何やってるのか。



月白隊長は馬で駆けてきたというのに。ざくざくと深い雪の道をひたすら歩くが、先は見えない。ーーまだ間に合う。引き返すのなら、今しかない……



図書館にはブランケット、お茶のサービスもある。運がよければスープも。そこでゆっくり暖をとって、読書をすればいいじゃないか。そっちの方が何倍もいいはず、なのに。



「……誰なんだよほんと……」



夢の中の少年は儚げで。



触れてしまったら、この白い花のように溶けてしまいそうだった。


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