まだ見ぬ世界へ
第5章 さよならの恋人
「お先、お疲れ~」
収録が終わり、衣装から私服にさっと着替えるとメンバーに挨拶をする。
「お疲れ様」
「また明日ね」
翔くんはすぐに視線を分厚い台本に戻す。
ブンブン手を振る相葉さんとは明日また取材で一緒。
手だけを上げて挨拶した潤くんはワクワクの打ち合わせ中。
「ちょっと待ってよ」
慌てて充電器をコンセントから抜いて鞄に押し込むリーダー。
「もう行きますよ」
足を止めることなく俺は楽屋のドアを開けた。
一分、一秒も……無駄にしたくない。
「みんな、お疲れ~」
「お疲れ様」
「お疲れー!」
チラッと振り返ると、ブンブン手を振る相葉さんとあっという間に台本に視線が落ちた翔くん。
無反応の潤くんはきっと聞こえていないんだろう。
「松潤、程々にな」
「えっ?あ…うん、お疲れ」
戸惑う潤くんにふにゃっと笑いかける。
見てないようでちゃんと見てるんだろうな。
でもそれはメンバーも同じで……
長年一緒に過ごしていると色々と察する。
「ごめん、行こ?」
結局は足を止めていた俺に声をかけると2人で楽屋を後にした。
こうやって収録終わりにいつも一緒に帰るのに、誰もツッコまないもきっと俺たちを察しての事。
最初は『一緒に帰るなんて珍しい』なんてツッコミが入ったけど、今ではそれが日常かの様に俺たちを見送ってる。
俺たちの関係に気づいているか、気づいていないかはわからない。
でもそれをあえて聞いてはこない。
だから俺たちもあえて何も言わない。
言った言わないで、メンバーとの関係は変わらない。
「今日、車で来たから俺ん家でもいい?」
「うん、いいよ」
そして俺たちも仕事終わりにこうやって一緒に過ごすことが当たり前になった。
「ちょっと小腹も空いたし、お酒も買い足したいからスーパー寄るね?」
「へーい」
コンビニでの毎回の買い物は高い。
そう思えるほど……ホント一緒に過ごしてる。