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まだ見ぬ世界へ

第5章 さよならの恋人

ゆっくり瞼を上げると、少し焼けた肌が目に映る。

肩に回された手でギュッと俺を抱き寄せたまま、スースーと寝息を立てているリーダー。

「…っ、いったぁ」

ちょっと身動ぎしただけなのに、ズキっと下半身に痛みが走った。

「ぅ…ん、ニ…ノ?」

俺の声に気がついて、目を擦りながらリーダーが意識を浮上させていく。

「なにもな……イタッ」

バレたくないって反射的にリーダーから離れようと動いたことが逆効果になり、激痛の悲鳴を抑える事ができなかった。

「無理に動くと余計に痛いから、まだ寝てな?」

俺の身体を引き寄せると、背中に回した手が優しく腰の辺りを撫でてくれる。

「ごめんな」

「ん、なにが?」

首だけ動かして見上げると、俺を見下ろすリーダーと目が合った。

「あの…うん、その……さ」


昨日、俺たちはひとつにはなれた。


なれたけど……最後まではできなかった。


やっぱり幸せは、痛みに勝てなかった。


「ふふっ、いいよ。気にしないで」

言葉にするのが恥ずかしくって口籠っていたら、リーダーは察してくれたみたいでポンポンと頭を撫でてくれた。

「ちょっとずつ進めばいいよ」

「そう…だね」

俺はギュッとリーダーに抱きついた。


『ちょっとずつ』

その言葉は身体を気遣ってのこと。

リーダーの優しさであって、深追いするものではない。


でも……そうせずにはいられなかった。


「どうした?やっぱ……怖いか?」


怖い。

怖いよ……


「大丈夫、怖くないから」

表情を見られたくなくて胸に顔を埋めたまま答えた。

「俺たちのペースでいこ?時間はあるんだからさ」

「うん……そうだね」


確かに時間はある。

でもその時間には……限りがある。


あと何日、リーダーと会える?

あと時間日、リーダーと過ごせる?

あと何回 、リーダーとひとつになれる?



『ずっと』なんて……俺たちにあるの?


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