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まだ見ぬ世界へ

第10章 想いを紡ぐ

「いやいや、お前じゃないから」

フンっと鼻で笑われた。

「当たり前だ!」


ホッと胸を撫で下ろしたが、全力で拒否されたのがちょっぴりショックだったのは内緒にしておこう。


「ちょっと期待してたりして?」


俺の心を読まないでくれ。


「そんな訳あるか!それより、狙ってるヤツって?」

「気になる?」

「いや、珍しいなって思って……来るもの拒まずで自分からって無いじゃん」

俺の言葉に、櫻井先生は溜め息をついた。

「あのな……俺だって好みがあるわ。来るもの全員相手してたら身体持たない」


発言がいちいち鼻につくな。


「随分とおモテのようで!」

「羨ましい?」

「んな訳、あるか!で、誰なんだよ?狙ってるヤツって」

俺の言葉を聞いて、櫻井先生は腕時計に目をやる。

「そろそろ、現れるな……」

そそくさと窓際に移動した。

「おい、俺のし……」

「まぁ、来いって」

嬉しそうに俺を手招きする。

「何なんだよ……」


マジ、時間の無駄だわ。


「あれ。俺の狙ってるヤツ」

指差した先には、校門に向かって歩く生徒が1人。

「3年A組の二宮和也」


3年A組……

確か、美術が授業であるクラスだな。


必死に記憶を辿ってみた。


「そんな生徒いた?」

全く顔が浮かばない。

「本当に生徒の顔と名前、覚えないね」

「興味ないもん」

「あの顔……もろタイプだわ」

ニヤニヤと笑いながらその姿を見つめる。

「顔、緩んでるから」

「ヤバいヤバい、男前が台無しになる」

ペチンと頬を叩いた。

「自分で言うな」

モテる櫻井先生がそこまで絶賛する二宮くん。


どんな生徒なんだろう?


目を凝らして見てみたが、
ここからじゃ顔がハッキリしない。

確か、明日授業があったな。

「ちょっとは生徒に興味出た?」

「さぁ、どうだろうね?」

「ふーん」


怪しげに俺を見つめる櫻井先生。


また、心を読まれた。


まぁ、いっか。

櫻井先生のお陰で、明日の授業が楽しみが増えたから。

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