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まだ見ぬ世界へ

第11章 アイツは可愛い年下の男の子

『お疲れ様でした』

エレベーターまで見送ってくれたZEROのスタッフに頭を下げる。

そして扉が閉まると、ササっとスマホを取り出して早速メッセージのチェック。


ZERO、お疲れ様!
またエンディングの有働さんの無茶ぶりに焦ってたね(笑)


『顔……ニヤけ過ぎですから』

冷たい視線を俺に送りつつ、チクッとマネージャーが釘を刺す。

「いーだろ?緊張と緩和ってやつだ」

俺はニヤけている顔を戻すこともせず、メッセージを打ち込んだ。


今から帰るよ


送信後すぐにつく既読に、寝ずに俺からの連絡を待っていた事が伝わってくる。


週の始まりの月曜日。

生放送という緊張感は半端なく、初めの頃は本番終了後の気持ちの切り替えも上手くできなくって、お酒に頼る日も少なくなかった。

そんなある日の収録終わり、スマホをチェックするとLINEが入っていた。

シンプルな文面で『体調、大丈夫?』って。


実際にその日は風邪気味で体調は良くなかった。

でも病院に行くほどでもなかったので、マネージャーやスタッフにも伝えなかったし、俺の体調が悪い事に気づくこともなかった。


そんな俺の体調の変化をテレビ越しで気かづくなんて、流石としか言いようがない。


良く分かったな。
ちょっと、風邪気味。
でも大丈夫だから。


誤魔化しようもないから素直に返事をするとぐに既読がつき、返信があった。


コンビニで野菜スープがあったら買って。
もしなかったら味噌汁でもいいよ。


的確なアドバイス。

さすが相葉くんの薬箱……って今日は俺の薬箱か。


サンキュ
帰り、コンビニに寄って買うわ


『お大事に』って文面の後に本人とは似ても似つかない可愛げなスタンプが押され、その日のやり取りは終わった。


それからちょこちょことLINEが届くことがあって、いつの間にか毎週になっていった。

そしてそのやり取りが、俺の気持ちの切り替えのスイッチになっていったんだ。

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