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ｺﾝｺﾝ…


気を遣って遠慮がちにドアをノックする音。

「はい」

「和也さま、体調はいかがですか？」

「もう大丈夫だよ」


いつも絶妙なタイミングだよな……


俺が発情期に入っていた事はお手伝いさん全員が知っていて、その間は誰もこの部屋に入らない。

食事に関してはドアを開けたそばにテーブルがあり、そこに置いてくれている。

だだ食欲自体ないからほぼ食べる事がなく、手つかずになる事も少なくない。

だから『作らなくてもいい』って言っているんだけど、『食べたい時だけでも』といつも作ってくれている。

でもそのお陰で、食べなきゃって思えるんだけどね。


「夕食はどうされますか？」

「うん、食べる」

「ご無理……されてませんか？」

他のお手伝いさんもだけど、みんな俺の辛さを知ってるから毎回こうやって心配してくれる。


だってここで働く多くのお手伝いさんは、ほほ俺と同じΩ性だから……


「ふふっ、心配性しすぎ」

少しでも安心させようドアを開けてヒョコっと顔を出す。

「ね、顔色も悪くないでしょ？」

「そうでございますね」

ニコッと優しく俺に微笑んでくれた。


ここで働いているお手伝いさんは本当にいい人ばかり。


でもΩ性ってだけで社会から冷遇される。

同じ人間なのに……


「ご主人様も早く帰って来られるとご連絡がありましたので、ご一緒できると思います」

「そうなの？珍しい」

発情期の間は当たり前だけど会う事のない父、そして母。

特に父に関しては普段も忙しく、朝に顔を合わせる程度でしかない。

「では、お食事の用意をしてまいります」

「ありがとう」

「和也さま」

ドアを閉めようとしたら珍しく呼び止められる。

「何があっても、私たちは和也さまの味方ですから」

「えっ？どういう……」

ペコっと頭を下げると、初めて俺の問いかけに振り返る事なく去っていった。