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まだ見ぬ世界へ

第15章 エンドウの花

……どれくらい歩いただろう。

靴擦れしていて歩くのも辛いし、お腹が空いて力も出ない。

車もたまに通るくらいで街灯もまばらな真夜中の道路。


ふらふらと歩いていると、小さいけど眩いくらい明るい光が先の方に見えた。

その光に吸い寄せられるように向かうと、そこはコンビニだった。

「トイレ貸してください」

『どうぞ』

中に入って汗でベトベトした顔を洗う。

そして蛇口から出る水を手でくみ取り、カラカラの喉を潤した。

「ありがとうございました」

お礼だけを言って何も買わず出ていく俺の背中に冷たい目線が突き刺さる。


俺だってガムのひとつでも買いたい。

でも……


外に出て店員が見えない建物の影に腰を下ろすと、リュックから財布を取り出した。


何度見ても一緒。

お札はなく十円玉と一円玉が数枚。


グルルッ…


それでも容赦なしに身体は食べ物を求めて悲鳴を上げる。



家を出てどれくらいたっただろう?



夜は24時間営業のファミレスで時間を潰す。

未成年の入店可能時間になるとネットカフェに行って風呂、洗濯、睡眠。

ネットカフェを出ると、ただひたすら歩いた。



死に場所を求めて……



不便のない家出生活は短かった。

高校生が持ち合わせているお金なんてたかが知れてる。



洗濯している服もない。

食べる物もない。

寝る場所もない。



俺の居場所は……どこにもない。



あるのは俺の命だけ。



こんな所で力尽きたら迷惑だよね?

最後くらい迷惑かけないで死なないとね?



『あんたは産まれてから私を不幸にし続けた。これ以上は耐えられない……消えて』



あなたの幸せのためには、跡形もなく消えなきゃ駄目だよね?



でも、産んだのはあなたでしょ?

なぜ俺が責められなきゃいけないの?


溜めておかないといけない水分が、目からポロポロと零れていった。

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