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まだ見ぬ世界へ

第3章 幸福論【序章】

「相手の人には話してるの?」

父さんの気持ちはありがたい。


でもそれは相手があっての事。


「俺がどういう意図を持って和也を紹介するかを含め、全てを話した。それを聞いたうえで、会ってくれると言ってくれた」

「ほんと…に?」


『ゲイ』と告白していたとはいえ、俺は『男のΩ性』

特殊な部類の俺を受け入れる事は容易ではない。

その上、俺の未来の選択肢を増やすために自分が紹介されたと知っても……俺と会ってくれるの?


「優しい人だよ、彼は。目に涙を浮かべながら俺の聞いてくれた。でも、彼は優しいだけじゃない。ちゃんと和也を1人の人間として見てくれるはずだ」

「なんで、そう思うの?」

「俺はこう言ったんだ。『1度会って、また会いたいと思ったらまた会います。そしてそれが続く中でお互いがお互いを好きになったら結婚します』って」


面接での発言といい、この発言といい……本当に凄い人だ。

だって普通は社長の顔色を伺って、機嫌を損ねないような返事をする。

自分の体裁を守るため。

それが世間一般の考えだと思う。


でもこの人はちゃんと自分の意思を伝えた。

社長の為、そして俺の未来のためでなく、自分の気持ちを最優先とすることを……


「きっと彼なら、和也の事をちゃんと見てくれる。だから和也もちゃんと相手と向き合え。彼も、そしてマッチングシステムで選ばれた3人とも……」

「うん…わかった」

俺は3枚の書類と名刺を見つめる。

「和也さま…っ!」

ずっと近くで俺たちの話を見守っていたお手伝いさんがバタバタと俺に近づいてきた。

「私たちは、和也さまの幸せを……願ってます」

その言葉にみんなが大きく頷いた。

「ありがとう……ありがとう、みんな」

俺も母も……お手伝いさんも泣いていた。

そんな俺たちを父は優しく笑って見守ってた。








俺、絶対に……幸せになるからね?







俺はポケットからスマホを取り出した。

電話番号を入力し、通話ボタンをタップする。

「もしもし……マッチングシステムで選ばれた3人と会いたいので、セッティング……お願いします」


幸せになるための未来の一歩を……踏み出した。



【To be continued】

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