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まだ見ぬ世界へ

第4章 幸福論【登場人物】

「あと翔さん、これが……ポストに入ってました」

珍しく歯切れの悪い風磨。

その理由は差し出してきたA4サイズの封筒の送り主を見てすぐに分かった。


日本プラチナデータ機構


ここから封書が届くって事は、マッチングシステムで俺がピックアップされたことを意味する。

「どうするんですか?」

「どうするって言われてもな……」

届くとは聞いた事があるけど、実際に俺に届くとは想像もしてなかった。

「会ってみたらいいじゃないですか?」

「すげー、簡単に言うな」

さもそれが当たり前のように言い放つ中島くん。

「家に引きこもってばっかりじゃ、出会いなんてないですよ!」

「出会いなんて別にいらねーし……」


今は仕事が楽しいし、何の不満も……


「翔さん、今……幸せですか?」

風磨の問いかけに俺は自信を持って返事する事は出来なかった。


幸せ?

幸せって……なんだ?


「翔さんにはずっと笑ってて欲しいんです」

「そんなに笑ってねーか?俺」

「笑ってはいますけど、たまに寂しそうな目を……してます」


楽しくないわけではない。

別に無理に笑っているわけでもない。


でもたまに風磨と中島くんが羨ましくなる。

見返りを求めず、 自己犠牲を厭わない愛が……


俺と顧客は『儲け』

まさに見返りがあってこその繋がり。


風磨と俺は『仕事』

俺と中島くんは『風磨』


2人は見返りを求めているとは思わないけど、その繋がりがなければこうやって一緒にいる事はあるのだろうか?


封筒から書類を確認し、1枚取り出した。


お互いにわかっている事はここに書かれている基本情報だけ。

俺に対してのイメージはない。

つまり自分にどんな見返りがわからない。


そんな俺をこの人はをどう思っているんだろう?

そんな俺にこの人はどんな事を求めるんだろう?



久しぶりに……人という存在に興味を持った。



「俺、会ってみるよ」

「いい人だといいですね……風磨みたいに」

「結局、惚気かよ」

また真っ赤になった風磨を見て2人で笑った。


そんな人……滅多にいないよ。


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