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まだ見ぬ世界へ

第4章 幸福論【登場人物】

風磨と仕事をする上で、中島くんの存在は大きかった。


俺は『α性』で風磨は『Ω性』


互いに好意は持っていなくても、風磨が仕事中に発情期の症状が出れば互いに理性を失う。

俺にとって風磨は大切な存在ではあるけど、あくまでも仕事のパートナーであったり、可愛い後輩。


その関係を崩したくはなかった。


だから仕事を辞めて一緒に働くには、その問題を解決する必要があった。

でもいくら考えたって解決策は出てこない。


そんな時、風磨から中島くんを紹介された。


風磨とは幼馴染で、恋人。

どんな時もずっとそばにいて、風磨を支えていた存在。


『健人がいたから、どんな困難にも立ち向かってこれたんです』って照れくさそうに話している風磨は本当に幸せそうだった。

そして中島くんも『風磨が頑張れるなら、何だってできます』と決意ともとれる言葉を俺に言った。



中島くんの決意……

それは風磨と『番』の契約をする事。



それは俺と風磨が何事もなく働ける唯一の解決策だった。



『番』の契約をすれば発情期はあるものの、α性を誘惑するフェロモンに『番』の以外は反応しなくなる。

つまり風磨に発情期の症状が出ても俺がその事に気づくことはなく、風磨を襲う事もない。


でも『番』という契約は互いの一生を誓い合う行為。

そんな重要な『番』という契約を、簡単に……ましてや風磨の仕事のためにしてもいいのか?


そう言おうとしたけど……

2人の意思、そして覚悟は固かった。


『お願いします』と風磨と中島くんが俺に頭を下げた。


『番』の契約をしてまで俺と働きたいと思ってくれる風磨。

風磨のために『番』の契約をする事を決意し、今日あったばかりの俺に頭を下げる中島くん。


その2人の姿に言える言葉と行動はただ一つ。


『こちらこそ、よろしくお願いします』と俺は頭を下げた。


そして2人の覚悟にに答えるために、風磨を一人前の『専業デイトレーダー』にすると決意した。

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