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まだ見ぬ世界へ

第4章 幸福論【登場人物】

「実は和也は……俺の子じゃないんだ」

「えっ?」

そう反応したのが最後で、複雑な和也さんの生い立ちに様々な感情が沸き上がってはコロコロ変わっていった。

でもその社長の言葉の端々から亡くなった両親、そして社長と奥様の和也くんへの愛を感じた。

「あの……写真をもう一度、拝見してもよろしいですか?」

「あぁ、構わないよ」

受け取った写真立ての写真の和也さんをもう一度見つめる。


やっぱり……

そんな生い立ちを感じさせない笑顔だ。


「もしかして和也さんは……」

「あぁ、和也は何も知らない。それに書類が届いたことも……」

俺の当たって欲しくない予想は当たっていた。

「私はね、姉のような想いを和也にはして欲しくないんだ。その為に『β性』の君が必要なんだ」


この会社を就職先のひとつに選んだ理由。

それは第2の性で社長は人を判断しない。


でも社長は第2の性……つまり『β性』だから和也くんに俺を紹介しようと思った。


それは……なぜだ?


「Ω性の和也には子どもを産むという責務が生じる。でも生まれてくる子どもが『α性』とは限らない。もし『Ω性』が生まれたら……」

それ以上、社長は何も言わなかった。

そして俺もそれ以上聞かなくても言いたい事はわかった。

「でも君なら、その未来はなくなる。だからその選択肢を和也に与えてあげたいんだ」

社長が俺に頭を深々と下げる。

「社長、止めて下さい!」

「和也のためにできることはこれくらいしか……ないんだ」


俺は嬉しかった。


初めて『β性』である俺を求めてくれてたこと。

そしてあの日、拒絶された『Ω性』との未来を見出したくれたこと。


「私でよければ、和也さんの未来の選択肢に加えて下さい。だだ……偉そうではありますが条件があります」


でもあの日の俺じゃダメだ。


「1度会って、また会いたいと思ったらまた会います。そしてそれが続く中でお互いがお互いを好きになったら結婚します」

「あぁ、もちろんだ。ありがとう、相葉くん」

目に涙を浮かべる社長。


今度こそ、真っ直ぐな気持ちで向き合いたい。


例え出会うキッカケが『第2の性』であっても、きっと和也さんはそれだけで俺を評価しない。


社長のように俺自身を見てくれるだろうから……


【To be continued】

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