テキストサイズ

まだ見ぬ世界へ

第5章 さよならの恋人

ピコピコッ…


おっ、来た来た。

待ってましたとスマホをタップすると、グループLINEにメッセージが入っていた。


【話がしたい】


リーダー、ナイスタイミングじゃん。


話がしたいなんて勿体ぶっちゃって……

わかってますよ、私は。


メッセージのあとに他のメンバーの了解の文字やスタンプが続き、最後は俺がメッセージを送った。


お酒とか用意する時間も多少いるかな?


浮き立つ気持ちを抑え、少し時間を空けてから部屋を出た。


コンコン…


「はーい」

部屋の主ではない明るい声が中から聞こえた。

「お邪魔しまーす」

返事をした相葉さんがドアを開けてくれて部屋へと入った。

小さなテーブルにはビールとおつまみが隙間なく置かれている。

「あれ、リーダーは?」

キョロキョロと辺りを見渡しても部屋の主の姿はない。

「あっ、今シャワー中」

潤くんが浴室の方を指差した。

「あー、もう……早く飲みたいっ!」

「ダーメ」

相葉さんがつまみに伸ばした手をペチンと翔くんが叩いた。


それからリーダーが来るまでそれぞれがスマホを弄って時間を潰す。


最近はあーだこーだって話す事ってあんまりないし、この沈黙も慣れれば何とも思わない。

長年一緒にいれば、過ごし方も変わってくる。


「あれ、上がったの?」

「あ、うん」

翔くんの声に顔を向けると、風呂から上がってサッパリした様子のリーダーが俺たちの方を見てた。

「ほら、早く早く」

なぜかボーっとしたままのリーダーに業を煮やしたのか、相葉さんが背中を押して椅子に座らせた。

「おーい、眠たいんですか?」

反応のないリーダーの前で掌を上下させる。

「眠たいのはいつもの事でしょ?」

クスッと笑いながら潤くんがそれぞれの前に缶ビールを置いていく。


さっきまでの静かな部屋が大野さんへの弄りで盛り上がる。

でも当の本人は全く喋ってない。


存在だけで周りを明るくする……本当に不思議な人。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ