友達のままがいい
第4章 (過去)高校生
「竹中さん…一緒に帰ってもいいかな?」
そう声をかけてくれたのは隣のクラスの中里慶介(なかざと けいすけ)くん。
喋ったことはなくても顔と名前ぐらいは知っている。
「急にごめんね…嫌だったらいいんだけど…」
返事をしない私に困った顔をする中里くんに首を横に振ると、ホッとしたように私の横に並んで歩きだし、歩くのが遅い私の歩調に合わせてくれる。
「ごめんなさい…私歩くの遅くて…」
「んっ?大丈夫、気にしないで…」
そう言いながら、私を急かすことなく一緒に歩いてくれる。
則ちゃんもそうだった。
手を繋ぐようになったら私に歩調を合わせてくれるようになり、いつも隣を歩いてくれていた。
だけどその彼はもういない。
彼が手を繋ぐ相手は私ではなくなってしまった…
「辛かったら…声を出して泣くべきだよ」
則ちゃんのことを考えて辛くなっていると、中里くんの言葉が耳に届いた。
顔を上げると流れている涙を拭ってくれた。