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友達のままがいい

第4章 (過去)高校生


「文香、帰るよ」

話が弾み、何のために教室にいるのかも忘れて話に没頭していた私は、慶介の言葉で我に返った。
いつからそこにいたのか、教室の入口のドアに背中を預けている慶介が機嫌が悪いのは見て取れる。
機嫌が悪い慶介は私の返事を待たずに歩き出すから慌てて慶介を追った。

「…待って。…則ちゃんまたねっ」

追いついても歩調を緩めることもなくスタスタと歩く後姿を必死についていく。
いつもなら私の歩調に合わせてくれるが今日はそれをしてくれない。
それだけ怒っている証拠で、怒っている慶介にどう接していいのかわからない。
付き合いだしてこんなことは初めてで、困惑する。
温和で優しい慶介は普段怒ることがない。
いつも私に気をつかってくれてやさしい。
そんな慶介が今日は私のことを気にかけてくれない。
理由はわかっている。
だから説明しようと思っても、どう言っていいのか分からず、ただついていくことしかできなかった。

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