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友達のままがいい

第4章 (過去)高校生

最後のホームルームも終わり、友達と先生に最後の別れを軽くして教室を出て、校舎を回り校庭を回り、少しだけ感傷に浸った。

「文香!」

感傷に浸っていると思いもよらない人から声を掛けられ驚いて動けなかった。
振り向かないでもわかる声音に緊張する。

「そんなに緊張しないでよ。最後に話をしたいと思ってたんだ。少しいいかな?」

そう言って肩に手を置いて、優しく微笑んでいるのは慶介だった。
別れてから一度も話すことはなかった慶介は昔と変わらない笑顔を私に向けてくれていた。

「文香は就職だったね」

「…うん…」

「僕は進学で地元を離れることになるんだ。だから最後に文香とどうしても話がしたくて迷惑だったかな?」

「迷惑だなんて…慶介の方こそ…私と話すの嫌じゃないの?」

「嫌じゃないよ。嫌だったら話しかけたりしないよ」

昔と変わらない笑顔にホッとする。
この笑顔を大切にしていたら私は幸せになれたのかな…

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