俊光と菜子のホントの関係
第7章 『少しだけでも……』
――俊光君と智樹さんは、歩いては止まり・歩いては止まりをのんびりと繰り返しつつ、道の両側に長く並ぶ出店(でみせ)を眺めながら話している。
花火会場は、この出店通りを抜けた先にあるんだよね。私達が今いるのって、たぶん通りの中間辺りかな?
私と明里はというと、二人からある程度離れたところで、ヒソヒソ話をしていた。
「菜子ぉー。あんたグッジョブだよーっ。
智樹さんカッコ良すぎるし、身長も理想の高さだし、話してて楽しいしーっ」
明里、興奮冷めやらぬって感じ。
「喜んでもらえて良かったー。花火大会様々だね!」
「ホント。浴衣姿も可愛いって言ってもらえて、もう最高よ。
ところで菜子は……俊光さんに何か言ってもらえた?」
「えっ? う、うん……。『似合うよ』って……」
わー。思い出しただけで、顔がポッポするー。
言った時の俊光君の表情があまりにも柔らかくて、ちょっとだけ――『私のこと好きなんじゃないの?』なんて勘違いしちゃうぐらいだった。
も、もちろん、そんなワケがないんだけどっ! 私があまりに好きすぎて、俊光君の仕草や表情を美化させちゃってるだけですからーっ!
「……やだぁ菜子ったら。それだけで照れちゃってんのー? もう、可愛くて食べちゃいたーいっ」
「ちょっと明里ーっ、こんなところで抱きつかないでよー。ていうか、胸まで触ってー……」
ドンッ!
「ひゃっ、ごめんなさぁいっ」
よろけて隣の人とぶつかっちゃった。と同時に、
ピチャッ……とした。
えっ? 何か濡れた感触がした?
自分をよく見ると――
「あーっ! そ、袖がぁ!」
片側の袖に、何かがかかってるー!