俊光と菜子のホントの関係
第7章 『少しだけでも……』
「あっ……ごめんなさいっ! ジュースがかかっちゃって!」
ぶつかったと思われる女の人が、慌てて私に謝ってきた。
「……え、ジュース!?」
あ、ホントだ。女の人の手には、ジュース入りの紙コップが。
てことは……キャーー!
私は急いで巾着からハンカチを取り出し、袖を拭いた。
「菜子、大丈夫?」
「うん。たぶん、濡れたのは袖の下の方だけだから」
「ごめんなさい……」
「いえっ。私もよそ見しててぶつかっちゃって、ごめんなさいっ。ですから、気にしないで下さい」
「あ……本当に、ごめんなさいね……」
女の人は、最後まで申し訳なさそうにして行った。