俊光と菜子のホントの関係
第7章 『少しだけでも……』
「ろ、ロクでもないヤツじゃありませんっ!」
「いやーだってさぁ、こんなところに一人で行かせないでしょ、普通。オレだったら……もっと大事にしてあげるけど?」
「っ、ちょっと、近寄んないで下さいっ」
ジリジリ寄ってくるチャラ男を避けるように、ズリズリ後ずさり。
な、何で彼氏と一緒だって言ってんのに(ウソだけど)、諦めてくんないのぉ!? 話が違うよぉ! 聞いてないよぉー!
「だからさぁ、そんな彼氏なんて放っておいて、オレと一緒に行こうよ」
「っ!」
いやーっ! 手首掴まれたぁー!
よりによってこんな人気のないところでっ。誰もこっちに気づいてくんないしっ……!
っ、もーうっ……!
「はっ……離してぇーっ!」
「っ、いってぇ!」
あ。つい、すねを蹴飛ばしちゃった。
「っ、てっめぇー。優しくしていれば、いい気になりやがって!」
「いやぁー! いたーいっ、離してってばぁー!」
手首を掴む力がギリギリと入って取れないっ!
やだぁ、怖いよぉっ。誰か助けてっ……。
明里ぃ……智樹さんっ……。
「とっ…………俊光君っ、助けてぇーーっ!!」
一番来てほしい人に、大声を出して助けを求めたら――
「……っ、菜子っ!」
あっ、今の声は……!
誰が来たかハッキリとわかる前に、私とチャラ男の間を割るように入ってきたのは――
「とっ……俊光くっ……」
うそぉ……ホントに来てくれたよぉ。
俊光君は、私を掴んでいるチャラ男の手首をガッシリと掴み取った。
「っ、いででっ……!」
「早くこの手離せよ。じゃないと、手首が使い物にならなくなるぞ」
チャラ男を冷ややかに睨みつける俊光君は、更にギリッと力を入れる。
「ぐわっ」
チャラ男がますます痛がると、やっと手を離してくれた。
スゴい、俊光君が強い。そして結構迫力がある。ここまで怒りに満ちた俊光君、初めて見たかも。
離れた隙に、俊光君は私を自分の背後に回して、チャラ男から遠ざけてくれた。
あ……俊光君の背中を見たら、安心して涙が出てきちゃった。
俊光君が来てくれた。私を助けてくれた。
っ、俊光君っ……!
愛おしくなって、すがりたくなって、
俊光君の広い背中にしがみついた。