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俊光と菜子のホントの関係

第7章 『少しだけでも……』


「な……何ですか?」

「もしかして一人なの? こんな暗い所にいたりして」

「えっ? いえっ、私は――」


 警戒心丸出ししつつ、『一人じゃないです』と言おうとしたら、


「良かったらオレと一緒に、花火見ない?」


 なんて言葉を被せてきたから、一瞬止まっちゃった。


「…………はい?」


 な……何これ。

 はっ。もしかして、『ナンパ』ってやつぅー!?

 ひゃーっ、どうしよー! ナンパなんて初めてされたよぉー!

 動揺を隠しきれない私に、


「あははっ。そんなに怯えないでよー。ただ一緒に花火見ようって言ってるだけなんだからさぁー。
 その浴衣姿があまりに可愛くて、つい誘いたくなっちゃったんだよねー」


 と言いながら……

 うひゃーっ。下から上へと舐めるように見てくるぅっ。


 やがて目線は、胸辺りでピタッと止まった。


 きっ……キモいよぉーっ! 背筋がゾワゾワするー! こんならオバケの方がまだマシだよぉー!


 胸を守るべく、腕でガッチリとガードした。


 こ、これは、何としてでも断らなきゃ!


「あのっ、私……一人じゃありませんからっ!」


「へぇ……そうなんだ。
 ひょっとして……『彼氏』と?」


「えっ……彼氏?」


『彼氏』というフレーズで、とっさ的に――

 俊光君が浮かんじゃった……。


 もーう、違う違うっ! 今はそんなことを考えてる場合じゃないでしょー!

 けど……そう言えば、あきらめてくれるかもしれない。

 よ……よーしっ!


「……っ、はいっ。そうですっ。
 か……彼氏と一緒ですっ!」


 い、言っちゃった。しかも、ちゃっかりと俊光君を思い浮かべながら。

 これはね、いいのっ。必要最低限の嘘だもんっ。ナンパを回避するためだから、しょうがないのっ。

 どうせ知らない人なんだから、この場を切り抜けられればいいもんね――


「ふーん……。けどさぁ、君を一人にしちゃう彼氏なんて、どうせロクでもないヤツなんだろー?」

「……え?」


 ロクでもないヤツ?


 この人は知らないで言ってるだけなんだけど、俊光君を思い浮かべていた私からしたら、まるで俊光君が悪く言われてるように感じ取っちゃって、ついムカッときちゃった。


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