俊光と菜子のホントの関係
第7章 『少しだけでも……』
「…………あ、へ、変なこと言ってごめんなさ――」
「いいよ、それでも」
「えっ……」
取り消そうとしたら、俊光君がそれを阻止するように遮って――
「なら俺も、菜子のこと……彼女だと思って歩くから」
独り言みたいに、私に言った。
「っ……俊光、君……」
周りは賑やかなのに、自分の心臓の音が一番うるさく聴こえてくる。
俊光君が、彼女って言ってくれた。私、妹なのに……。俊光君、お兄ちゃんなのに……。どうしよう、信じられないよぉ。
私、俊光君からそんなセリフが聞けるなんて思わなかった。
「だから、合流するまで離れるなよ?」
「うん……うんっ……」
俊光君は、また私を引っ張って歩きだした。
あ…………ハンカチ。ハンカチ出さなきゃ。
でも、巾着の中だから取り出せない。
繋いでる手も、一瞬でも離したくないから……
ごめん明里。また袖を汚すね。
私は俊光君に見られる前に、袖で涙を拭った。
俊光君が、彼女だと思って歩くからって言ってくれた。
少しの間だけだけど、ホントじゃないけど、
俊光君と恋人同士になれてるんだよね?