俊光と菜子のホントの関係
第7章 『少しだけでも……』
「……なぁ」
「ん?」
「もう……急いで合流しなくてもいいか」
「へぇっ?」
「花火始まっちゃったし、智樹と明里ちゃんもどこかで見てるだろうから。
二人で花火を見ながらゆっくりと歩くっつーのもいいだろ?」
手を離さないまま……けど、いつもどおりの俺として振る舞った。
「…………うんっ。私もそうしたいっ」
菜子は、いつも以上にニッコニコしながら頷いてくれた。
良かった……。菜子と恋人同士でいられる時間が少し延びた。
「……よしっ。じゃあ行くかっ。
けどな、上ばっか見て人とぶつかりまくるなよ?」
「わかってるよぉー」
会話はいつもの兄妹かもだけど、うわべだけの恋人同士だけど、俺の中では、菜子を完全に『本当の彼女』扱いしてる。
ごめんな。智樹、明里ちゃん。
俺まだ……菜子と恋人同士でいたいんだ。
だから……あと少し、もう少しだけでもいいから、
二人でいさせてくれな。
俺はさりげなく歩く速度を緩めて、
少しでも長く、菜子と二人でいられるようにした。