俊光と菜子のホントの関係
第7章 『少しだけでも……』
*
未だ、智樹と明里ちゃんとは合流出来ないまま(ていうか『わざと合流しないまま』と言った方が正しい)、俺と菜子は今でも手を繋いで、花火を眺めながら歩いていた。
「そうだ、俊光君。私、知らなかったよー」
ふと、菜子が何かを思い出したかのように話かけてきた。
「……何が?」
「俊光君に、人の骨を折るぐらいの力があるなんて」
「へ?」
「ほら。さっきチャラ男の手首掴んで、ギリギリしてたでしょ? だから」
尊敬の眼差しで見てくれてるのはありがたいけど――
「あー、あれ? ははっ、まさか」
「え?」
俺は、菜子の期待を裏切るだろうと思いつつも、軽く笑い飛ばした。
「武術もトレーニングも何もしてない俺が、片手だけで人の骨を折れるワケないだろう?」
そういうことだ。
「えー? でもあの時、『さぁ……早くしないと、お前の手首が使い物にならなくなるぞぉー』って脅してたじゃん」
「ぷはっ。そんな童話みたいな言い方してねぇし」
菜子が俺のセリフを、自分流に面白おかしくアレンジして言うもんだから、思わず吹き出した。
「じゃあ……あれは?」
「ハッタリだよ、ハッタリ。
あぁやって鋭く睨みを利かせて力いっぱい握れば、相手も怯むだろ? そこに付け込めば、いかにも『折られるっ!』って錯覚に陥るだろうなーと思ってさ」
「は……なんだぁー、そういうことぉ?」
菜子、一気に拍子抜けした感じだ。
「どうだ、ガッカリしたか?」
「……あははっ。うん、ガッカリした! もーう、俊光君ズル賢ーい」
ガッカリしたワリには、随分と楽しそうに笑ってるし。
「力ばかりが勝利じゃねぇんだよ。それに、怪我とかしたくなかったしな。だって……」
「?」
「俺が怪我をして、お前を守れなくなったら嫌だったから」
「あ……」
「本当……お前が無事で良かった」
空いてる手で、菜子の頭を軽くポンポンした。
本当に良かった。
最初襲われかけてるのを見た時は、生きた心地がしなかった。今思い出しただけでも怖いぐらいだ。
繋いだ手を離したくなかったのも、もう菜子にあんな目に合ってほしくなかったから……ていうのもあった。
「う……うぅーー……」
「お前っ、何泣いてっ……」
マジで急で焦るぞっ!