俊光と菜子のホントの関係
第8章 『かけがえのない兄妹』
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世間では二学期に入った。けどセミの鳴き声は、世間に関係なく一向にやまない。
大学の方もまだ休みは続いている。だから平日でもバイトは朝から入れていた。今日も朝からで、今は休憩挟んで昼下がりの時間帯。
夏休みも、図書館でのアルバイトも、入って1ヶ月を過ぎた。
大学から歩いていける距離にある図書館は、緑に囲まれていて、広く解放感のある造り。
その環境の良さと、静かで落ち着いた雰囲気に惹かれたのと、あと大学の好(よし)みで学生は優遇され、休みや時間帯などの融通を利かしてくれるということで、ここに決めた。
バイトを探していた智樹にも、『一緒にやるか?』と誘ってみたけど、
(あのなぁ俊光。オレが図書館って柄に見えるかぁ?)
(…………全然見えない)
というわけで智樹は今、同じく大学近くにある、コーヒーで有名なカフェチェーン店(通称・フタバ)で、緑色のエプロンを身につけてバイトをしている。
話を聞くと、智樹がそこでバイトを始めてから客が増えに増え(特に女性客)、お店の売り上げが急激に伸びたらしい。
智樹って、招き猫を擬人化したヤツなんじゃねぇの?
今日もバイトって言ってたから……帰りに行ってみるか。