俊光と菜子のホントの関係
第8章 『かけがえのない兄妹』
「……池崎君」
「はっ、はいっ」
え? また佐原先輩が来た。
何でだ? 俺、今度はちゃんと手を動かしていたよな? 別件?
「あのさ……やっぱり、体調悪いでしょ?」
先輩は、さっきよりも心配そうにして訊いてきた。
「いや、大丈夫ですけど……俺、そんなに悪そうに見えますか?」
「うん。だって、ここは絵本コーナーだよ?」
「はい」
「今、池崎君が並べてるのって……絵本じゃないんだけど」
「…………えっ!?」
先輩から穏やかに指摘されて、絵本のブックラックを見たら……ぎょっとした。
俺はあろうことか、ほのぼのとした絵本コーナーに――
『週刊レスラー』
『格闘のすべて』
『世界のマッスル』
など、暑苦しい雑誌をズラリと並べていた。
ま……マジか。
「それとも……池崎君って天然?」
「そう……かもしれません……」
今回ばかりは、返す言葉も言い訳も、あるわけがなかった。
※157ページの
『かけがえのない』の意味は、
ネットの『goo辞書』を引用しました。