俊光と菜子のホントの関係
第8章 『かけがえのない兄妹』
二人を盗み見していたら――
「……何だよ。二人してこっち見て」
あらま。俊光に視線を気づかれちゃった。
私達は、目を潤ませていたことがバレないように、さりげなく涙を拭った。
「あ、いや……お前達はいくつになっても仲がいいなーと思ってたんだ……。な、美都子?」
「えぇ、そうよぉー。ホホホッ」
聞いた俊光と菜子が、ふと顔を合わせてから――
「……そりゃそうだよ。俺達は『かけがえのない兄妹』なんだから」
「うんっ。他に代わりになる人がいない、たった二人だけの兄妹だもん」
俊光ぅ……菜子ぉ……。
兄妹二人の絆が強く結ばれていることを知ったら、胸がジーンと熱くなった。
「菜子。お前、あの時のこと覚えてたの?」
「覚えてるよぉー。とはいっても、今日思い出したんだけどね」
「へぇ、偶然。俺も今日思い出したんだけど。しかもバイト中に」
「えっ、そうなのっ? えへへ、何か嬉しー」
それから俊光と菜子は、二人の間でしか通じなそうな会話をしだす。私と勝治さんは、二人の気が私達から反れたのを見計らってから顔を合わせた。
「……勝治さん、見た? 聞いた?」
「あぁ。見たし聞いたぞっ」
「本当、いいコ達に育ったわねー……ぐすん」
「今の動画に納めておけば良かったなぁ……ぐすっ」
あー、せっかく拭ったのにまた目が潤んできちゃった。
ケーキはもう食べ終わったけど……可愛い我が子二人をまだ見つめていたいから、このままソファーに座り続けちゃおーっと。
家族団らんもしていたいし。
そのためのお供として、コーヒーをおかわりしなくちゃ。
「コーヒーのおかわり、いる人ーっ」
すると、三人一斉に「はーい」と手を挙げた。
三人とも、私と同じ事を思っていたのかしら。なんて、勝手にそう感じ取っちゃうと、やけに嬉しくなっちゃった。
―終わり―