俊光と菜子のホントの関係
第9章 『勝手にジェラシってる』
――……マジかよ。いや、普段ならなんも問題もないんだけどさ。
俺はついさっきまで、突然の可愛い嫌がらせをされてドキドキしてたんだぞ? してたっつーか、今も余韻が残ってるっつーか。そんな俺と、無防備な菜子と八時過ぎまで二人きりって……。
なぁ、父さん、母さん。俺と菜子は血が繋がってないんだよな? いくら兄妹として育ててきたからといって、男である俺を全く疑わないってのもどうかと思う。菜子の兄として信頼してくれてるのは、すごくありがたいことなんだけど……にしても、
「ねぇ、俊光君」
「っ、ん?」
考えてる途中で菜子が声をかけてきた。
何を言うのかと思ったら――
「二人きりだから……どうしたい?」
と来た。
「っ! な、何がだよっ!?」
可愛く首をかしげながらの『二人きりだから……どうしたい?』に、俺は良からぬ方向へと導かれ、ますますドクドクバクバクとさせられる。が、
「え、『何がだよ』って……夜ご飯だよぉ。『二人きりだから、夜ご飯を何時にしたい?』ってこと」
「あ……夕飯な」
菜子から『どうしたい?』の真意を聞くと、変にドクドクバクバクした自分が恥ずかしくなった。
「え、えーと……今四時過ぎだから、六時ぐらいとか?」
だ……だよな。菜子は良からぬ意味で言ったわけではないに決まってんのに。そんな判断もとっさに切り替えられないなんて、俺って自分で思ってる以上にヤバいかも。
「そうだね。私も、それぐらいにしたいって思ってたんだ。お母さんの手紙に書いてあったとおり、二人でいいコにして仲良く食べて、それから楽しいことして過ごそうねっ。えへへー」
「っ……そ、だな……は、ははっ……」
ほら、ダメだ。かなり重症だ。菜子のセリフの一つ一つが、変な意味にしか聞こえない。この無邪気っぷりも、今の俺にはかなり毒だ。
はぁー……まいったな。今まで家の中で二人きりなんてこと、昔から当たり前にあったはずなのに、こんなにもドキドキしてしまってる。兄の免疫、どこ行った?
今から数時間……大丈夫か?
――どことなく、何かが起きそうな予感がしたのは、気のせいであってほしいけど……。
―次話へ続く―