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俊光と菜子のホントの関係

第9章 『勝手にジェラシってる』


 俊光君が先頭をきって、門から玄関の前に着くと――


「……あ、あれ?」

「ん? どうしたの、俊光君?」


 確かめるようにドアノブをガチャガチャしてる。


「鍵がかかってる」

「え? てことは、お母さんまだ帰って来てないの?」

「たぶん……」


 俊光君が鍵を開けて家の中に入るも、やっぱり誰もいなくてシーンと静まり返ってた。


「お母さん、パートのお仕事が遅くなってるのかなぁ?」

「かもな」


 二人でリビングに入ると、


「あ。俊光君、なんか置いてあるよー?」


 キッチンのダイニングテーブルの上に、一枚の紙が丁寧に置かれてるのを私が発見した。


 そこには――



〈俊光と菜子へ。

 おかえりー。二人ともごめんね。
 夕方からのコが急に休んじゃったから、お母さんが代わりに夜の八時までお仕事することになったの。
 お父さんも残業でお母さんより遅くなるみたいだから、作っておいたカレーは二人で先に食べちゃいなさいね。
 じゃあね、いいコにしてるのよー(笑)。

                お母さんより〉



「……だって」

「え? てことは……八時過ぎまで二人だけ……ってことか」

「ふーん…………」

「…………」



 俊光君と二人きり……。


 やだ。まるでお母さんとお父さんが気を利かせて、俊光君と二人きりにしてくれたみたい。ケンカをした分、存分に仲良く過ごしなさいね、的な? えへへ、なんちゃって!


 自分のいいように解釈しちゃった私は、俊光君にバレないようにニタニタした。


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