俊光と菜子のホントの関係
第9章 『勝手にジェラシってる』
*
オレは地元の駅から一つ手前で降りて、カットの依頼をされた友達のところへ。
「フフフフーン」と鼻歌まじりで、友達の髪をシャキシャキとカットしていくと――
「晃ー。やけに上機嫌じゃね? なんかあったの?」
友達が真っ直ぐ前を向いたまま、オレに話しかけてきた。
「え? 別に? なんもないけど」
「ウソつけよ。明らかに何かあっただろー?」
ヤバ。更にツッコまれると、さっきまでのことを思い出して笑みが溢れそうになる。
「なんもないっつーの。いいから黙ってなって。変なヘアスタイルになってもいいの?」
「ゲッ。やめてくれよなぁっ」
オレの一言が効いて、友達はすぐさま黙り込んだ。
……そうだよ。お前の言うとおり、なんかあったんだー。でも教えてやんないよー。女のコ関連のことには、すんごい食いついてくるからな。
上機嫌のワケが――帰りの電車で偶然一緒になった菜子ちゃんだって言ったら、尚更食いつかれそうだし。
オレが、一目惚れをしたコだから。
しっかし、思わぬところで菜子ちゃんに会えるなんて。真っ直ぐ友達の家に向かって良かったよ。
菜子ちゃんって、いつ見ても可愛いよなぁ。愛らしくて無邪気でさー。明里が親友になってくれて、マジで感謝。
そして、何と言っても――あの胸の大きさ。オレの理想どおり……てどうしても思ってしまうのは、男のしょうがないところなんだと言い訳。
さっきも電車で――
(よそ見しないでっ。お願いだから私だけを見ててっ。ねっ?)
なーんて言われちゃったし!
『他のコによそ見しちゃヤダ!』みたいなことを、あんな険しい顔して言うって可愛い過ぎだよ。まいったなぁー。菜子ちゃんって結構独占欲強いのな。
今までそんなコ嫌だったけど、菜子ちゃんぐらい愛らしいと、男子を殴るぐらい気が強くても、独占欲強くても、全然許せちゃうよ。
あんなコの兄である俊光さんが、ものすごく羨ましい。一回でもいいから、明里ときょうだいの交換してくんないかな? なーんて思ったりして。
「よっしゃ、いっちょ上がり! どうだ?」
友達に鏡を当てて見せてみると――
「うおースッゲー! 晃、お前マジで天才だなぁ!」
「いやー、それほどでもぉー」
当分オレ、菜子ちゃんラブをやめれそうにないかも。