俊光と菜子のホントの関係
第10章 『抑えきれなくて』
満足するまで楽しんだあと、二人でゲームを箱の中に片付けた。
「はぁー、面白かったぁー」
「お前は死んでばっかだったじゃん」
「それでも面白かったのーっ。お父さんとお母さんがいない時じゃないと、テレビも占領出来ないしねー」
「…………」
よっぽど楽しかったんだな。俺と二人だけでも、あんなにハシャイだり、面白かったってニッコニコしたりして……。
「ん? なぁに?」
「あ、いやっ……。お前さ、父さんと母さんがいなくても泣かなくなったよな?」
「へぇ?」
顔を緩ませて菜子を見つめていたのを誤魔化すため、パッと頭に浮かんだ思い出を口にした。
「昔はよく泣いてたじゃん。
『私とお兄ちゃんだけなんて寂しいよー!』って」
「ちょっとぉー。昔の話を持ち出さないでよー」
そうだった。菜子って小さい頃、俺と二人で留守番をしないといけない時、いつも行こうとする父さんと母さんを、わんわん泣いて引き止めてたんだっけ。
「んで? お子ちゃま、今はもう寂しくないのか?」
わざと茶化して言うと、菜子はお約束の如く膨れっ面になった。
「もーう、寂しくないよぉー。
そりゃあ、あんまりいない日が続いたりしたら寂しいかもしれないけど、でも……」
「……でも?」
「でも、たまにこうして二人になるのも、いいなーと思って」
「えっ?」
「だって、俊光君を独り占め出来るから。えへへー」
「なっ…………」
茶化した仕返しをされたみたいだ。
不意打ちのセリフに、言葉を失ってしまった……。
「……あ。私、お風呂に入ってもいい?」
「は……あ、あぁ。どうぞ……」
「ありがとー。じゃ、おっさきー。
ふんふんふーん、ふふふふふーん……」
戸惑う俺に気づいてない菜子は、どこか嬉しげに鼻歌を歌いながらリビングから出ていった。