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俊光と菜子のホントの関係

第10章 『抑えきれなくて』



「菜子って、ホントこういうの下手な。もっと全体的によく見ろよ」

「無理だよぉー。近くの敵や障害物を避けるのにいっぱいいっぱいになっちゃって、全体を見渡す余裕なんてないんだもーん」


 常に怒り顔のキノコや、名前のとおりゆっくりマイペースにうろつく亀や、口を上に向けて噛みつこうとする土管に咲く花……などが、次から次へと現れる中で、走ったり倒したり飛んだりするというのは、菜子にはただのパニックの原因でしかないようだ。

 そんなに苦手なクセに『やろーっ!』とか言い出すし。昔からそうなんだよ。下手なのに、やたらゲームをやりたがる。きっと、ワーキャーとハシャグのが楽しいんだろうな。

 菜子をチラッと見ると、百面相しながら必死に操作してる。


 それを……見てる方も楽しいけど――


「俊光君っ! 前、前っ!」

「えっ!? ……あぁっ!」


 しまった!


 菜子を見てたのが油断に繋がってしまい、赤の兄はあっという間に画面の下の方へと落ちていった。その直後、テレビから間の抜けた音が鳴る。


「やだぁー、俊光君がこんな凡ミスするなんて珍しー。私じゃあるまいしー」


 あまり言われたくない菜子にクスクスと笑われ、ちょっとムッとした。


「い、今のはちょっと油断したんだよっ。ほら、もう一回!」

「うん!」


 あーあ。なーに見惚れてんだか……。


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