俊光と菜子のホントの関係
第10章 『抑えきれなくて』
――私は全身をくまなく洗ったあと、バスタブのお湯に浸かった。
「ふぅーー……あったかーい。体の芯まで染み渡るぅ。
ふふんふふんふんふーん……」
『いい湯』をテーマにした曲を口ずさんじゃうぐらい気持ちいいー。
バスタブのフチに後頭部を預けると、湯気がモワモワと立ち昇る中で、ボーッと天井を見上げた。
俊光君を独り占め……かぁ。んふふっ。
見上げたまま、俊光君に言ったセリフを思い出すと、両手で口を覆って含み笑いをした。
自分で言っておきながら、スゴい気持ちがくすぐったーい。
もちろん、私は『好き』の意味合いも込めて言ったんだけど……俊光君のことだから、どうせいつもの『兄ラブ』としか思ってないよね。
それと、俊光君がさっき話してた昔のこと。
あれには『裏』があるんだけど……俊光君いまだに気づいてないんだろうなー。
そりゃあ、お父さんとお母さんがいないと寂しいってのはホントだったけど……
泣いてダダをこねてたのって――
実は『演技』だったりするんだよね。えへへ。