俊光と菜子のホントの関係
第10章 『抑えきれなくて』
――リビングの掛け時計を見たら、いつの間にか八時を過ぎていた。
あっという間だったな。そろそろ母さんが帰ってくる――
「きゃあああああああっ!!」
「はっ!?」
え、菜子っ!?
風呂場の方から大きな悲鳴が。
ここまでハッキリと聞こえてくるって、尋常じゃねぇぞ。
まさかっ……のぞき!?
「マジかっ――」
急いでリビングから飛び出し、脱衣所の引き戸の前に立った。
「おい、菜子っ! 大丈夫かっ!?」
ドンドンと力強くノックをして、中まで聞こえるように大声で呼び掛けると、ガラーッと引き戸が開かれた。
「とっ……俊光くーーんっ!」
「いっ……!?」
菜子が勢いよく飛び付いてきたのとほぼ同時に、硬・直。
ちょちょちょっ……ちょっと待て。
その、格好っ……!
コイツ――裸にバスタオルを巻いただけじゃねぇかよっ!
今の俺には、猛毒以外の何者でもないぞ、それ!