
俊光と菜子のホントの関係
第11章 『一旦距離を置きたい』
――今日の一限目の講義は、普通の教室で行われる。
大講義室とは違って大分狭く、人と人との距離が近いから、智樹と二人で、人が少ない一番後ろの席に着いた。
そこで昨日の一連の出来事を打ち明けると、
「……あぁ!? 何だってぇ!? ついに手ぇ出しちまったか!」
げっ!
智樹の驚きの声が、教室全体に響いてしまった。
智樹は焦る俺を尻目に、視線を向けてきた全員に対して、「あははっ、悪い悪い。気にしないでー」と、いつもの軽い調子で謝った。たくっ……。
「智樹、声デカいって。お前はただでさえ目立つヤツなのに、余計目立ってどうすんだよっ。話しにくくなるだろうがっ」
潜めた声で智樹に訴えた。
「あのなぁ天然っ。そう言うならもっと場所を選べよっ。そんな際どいことを、人が集まってるところで話すお前が悪いぞっ」
智樹も潜めた声で俺に返す。
「まさかそんなにオーバーに驚くとは思わなかったんだよ。智樹のことだから、どうせいつもみたいにテキトーに聞き流すだろうと思って」
「アホか天然っ。こんなのテキトーに聞き流せるかっ。ただのノロケ的な相談事とは違って、内容が衝撃的だっつーのっ」
「ていうか、天然天然ってうるせーよっ」
「天然なものは天然なんだからしょうがねぇだろっ、天然っ」
って、オマケとばかりに言ってくるしっ。
