俊光と菜子のホントの関係
第11章 『一旦距離を置きたい』
「あーおかしい、図星かよー。しゃーねーなぁ、そんなに知りたいのかぁ? んー?」
コイツ、すっかり面白がってやがる。俺の肩を馴れ馴れしく組んで、からかうように顔を近づけてくるしっ。
俺はムキになって、智樹から顔をふいっと思いっきり反らしてやった。
「べっ、別にっ。
答えたくなかったら無理に言わなくたって――」
「いるよ」
「…………え?」
「好きな人。いるよ」
「…………っ」
躊躇いも恥じらいもなく、キッパリと答えた。
反らした顔をまた向き直すと――
智樹は、まっすぐに俺を見ていた。
いつにない智樹の真剣な眼差しに、つい胸がドキッと打たれてしまった。
また俺をからかってる……んじゃ、なさそうだ。
「えっ……と……い……いつから?」
「中学二年生の時から。ずーっとな」
「なっ、マジかよっ。そんなに長くっ……?」
全然知らなかった。聞いてなかったんだから当然だし、あまり認めたくないけど、鈍いと言われてる俺には尚更気づくなんてことが出来るわけもなく……。にしても、この智樹にずっと想い続けていた人がいたなんて。
予想だにしなかったカミングアウトに言葉が出ずにいると、智樹は組んでた腕を外し、フッと力を抜いて表情を緩めた。
「……自分でも驚いてるよ。あの頃と変わらず、色褪せることなく、スゲー好きでいちゃってるんだよなーオレ。
もうずーっと会ってないのに、毎日会ってるみたいにソイツのことを鮮明に思い出せるんだ。
たぶんオレ、この先もソイツだけを想い続けるんだろうって確信してる」
「智樹……」
まるで、すぐ目の前にその好きな相手がいるかのように想いを打ち明ける智樹は、いつもの軽くてチャラい智樹じゃなかった。
初めて見た――誰かを強く想う智樹を。
初めて聞いた――智樹の本気の想いを。
いつも異性に対して軽く振る舞って、誰とも付き合わずにずっと一人でいたのも……その好きな人のためだったのか?
この智樹をここまで本気にさせる相手って、一体どんな人なんだよ?
そんなに好きなのに、何でその人とは会わなくなったんだよ?
質問事項は次から次へと浮かぶけど……でもなんとなく、簡単に訊くことが出来ない、簡単に触れてはいけない領域だと感じた。