俊光と菜子のホントの関係
第11章 『一旦距離を置きたい』
「はぁーあ、腹いてぇー。今日だけで何回俊光に笑わされたんだろ。頼むから、強制的に腹筋を鍛えさせるんじゃねぇよー」
「笑わせてるつもりもねぇし、腹筋を鍛えさせてるつもりもねぇよっ」
って、まだ腹を抱えてるし。そんなに笑うことかよ。
「そういう智樹だって、どうなんだよ」
「何がだよ?」
「俺のことをからかってばかりいるけどさ……」
「うん」
「智樹には――好きな人とかって、いないのかよ?」
「……えっ?」
智樹は不意を突かれたのか、目をパッと見開いた。
あ……自分でもあとから思った。唐突な質問をしたと……。
確かに、前から思ってはいたことだけど……無理に訊く必要もないだろうと何となく後回しにしていたのに、つい勢いで訊いてしまった。
智樹、まだ目を見開いたまま黙ってる。
え、もしかしてこれって……されたくない質問だったのか? と不安になりかけると……智樹は、ニヤリとした意味深な笑みを浮かべてきた。
「ふーん……そうかー。俊光は、好きな人が誰なのか気になるぐらい、オレにゾッコンラブかー」
「……はぁっ!?」
「いやーまいったなー。オレって罪な男ー」
勝手に変な解釈して得意になっていやがるしっ! ゾッコンラブなんて、どうして出てきた!?
「ば、バカかっ! そうじゃねぇに決まってんだろっ! 友達としてだよ、友達としてっ!」
って、俺も俺で、智樹のからかいに対してまともに反応しすぎだぞ。親友(しかも男)相手に何を熱くなってるんだっ。
そんな態度をあからさまに晒してしまった俺は、また智樹の腹筋を強制的に鍛えさせることに。